運動器エコーについて

これまで、エコー診療で観る対象は、妊婦検診における胎児や、内科検診における心臓や肝臓といった身体の深い場所が中心でした。しかし、近年機器の性能が向上し、浅い場所の組織をより詳細に評価できるようになったことで、整形外科領域においても腱や靭帯といった皮膚に近く、浅い場所にある組織をより詳しく観ることが可能になってきました。

 医療法人ONE TEAMでは、コニカミノルタ製超音波画像診断装置SONIMAGE(ソニマージュ) HS1をはじめ、計8台の運動器エコーを、すべての診察室とリハビリ室に常設し、超音波の利点を最大限に活用して、腱・筋肉・靭帯・神経など運動器の病気・けがでお困りの患者さんの診療に役立てております。

「運動器エコー」の優れた7つのこと

1.治療に使えること

運動器エコーのもっとも優れた点は、検査だけではなく治療に使える点です。拘縮肩に対するサイレントマニピュレーション、筋膜や神経周囲へのハイドロリリースなどで劇的な効果を表しており、いままでの運動器治療に大きな変化をもたらしたと言えます。

2.安全であること

腱鞘内注射、神経ブロックなどの際に、超音波で神経・血管などの位置を確認しながら行うことで、これらを損傷することなく安全かつ正確に実施できます。

3.被爆しないこと

放射線を浴びることがないため、妊婦さんやお子様などの患者さんにも安心してご利用いただけます。

4.動きがみえること

運動器エコーでは靭帯や腱、筋肉など動いているものを、そのままリアルタイムに観察することが出来るようになりました。これによりリハビリテーションの効果を評価することで、復帰時期の判断の助けにもなっております。

5.炎症の状態がわかること

運動器エコーでは血流の増加を捉えることが出来るので、関節リウマチなど通常より血流が増える病気や、局所の炎症を診断することが出来ます。

6.患者さんの目の前ですぐに行えること

運動器エコーは診察室で、患者さんの目の前で画像を観ながらすぐに結果を説明できるので、患者さんから高い信頼と満足度を得られております。

7.保険診療で行えること

当院では保険診療で実施しており、1回の超音波検査費用が1割負担で350円、3割負担で1050円となっております。1回の検査で、肘や膝など何部位見ても、1回分の負担となっております。

「運動器エコー」の対象となる疾患

レントゲンにははっきり写らない組織(筋肉、腱、靭帯、神経など)に由来する疾患が中心ですが、一部の疲労骨折などに用いる場合があります。下記以外にも多数の対象疾患がありますので、受診時に担当医にご相談ください。

■腱 鞘 炎 : ばね指、デュケルバン腱鞘炎 など


■付着部炎 : 膝蓋腱炎、上腕骨外側上顆炎、足底筋膜炎 など


■神経絞扼性疾患 : 手根管症候群、肘部管症候群 など


■腫 瘍 : ガングリオン、ベーカー嚢腫 など


■外 傷 : 疲労骨折、靭帯損傷、腱板損傷、小児外傷 など


■炎症性疾患 : 関節リウマチ、粉瘤、滑液包炎 など


■変形性関節症 : 母指CM関節症、変形性膝関節症 など


■小児骨端障害 : オスグッド症候群、シーバー病など


■スポーツ障害 : シンスプリント、半月板損傷

「エコーガイド下注射(特にハイドロリリース)」について

筋膜とは…

筋膜は全身に張り巡らされている膜で、筋肉だけでなく、神経、血管などの様々な構成要素を包み込んでおり、体を支えています。何層もの膜で構成される筋膜が滑らかに動くことで筋肉や関節がうまく動きます。しかし、長時間同じ姿勢でいたり、疲労、ストレスなどで筋肉が緊張した状態が続いたりすると、筋膜同士や筋膜と筋肉、筋膜と神経・血管などが癒着して、筋肉の動きが悪くなり、筋肉の柔軟性の低下、関節の拘縮、筋肉の出力の低下などが生じます。さらに癒着部、分が炎症などを起こすことで、痛みを引き起こします。

筋膜リリースとは…

筋肉がスムーズに動くためには、筋膜の滑りの良さが必要です。筋膜を柔らかくし筋肉の滑りを良くして解きほぐすことを「筋膜リリース」と言います。筋膜リリースを行うことにより、筋肉同士の癒着が解消され、筋肉の柔軟性や関節可動域の改善、また筋出力の改善などが見られます。また筋膜間を通る神経や血管の圧迫も解除されることで、疼痛やしびれが解消します。筋膜のコリが取れることで、体を動かしやすくなる方もいらっしゃいます。

ハイドロリリースとは…

これまでは、ストレッチなどの自主トレやリハビリテーションなどで用手的に筋膜のリリースを行ってきましたが、最近ではエコーの進歩により、さらに効果的に行うことが可能となりました。「ハイドロリリース」という治療法です。エコーで位置を確認しながら、注射を用いて薬液を筋膜に注入します。ハイドロリリースを行うことで、癒着が剥がれ筋肉の動きがよくなり、疼痛が解消されます。あくまで目的は癒着を剥がすことが目的ですので、使用する薬液は生理食塩水と非常に少量の局所麻酔薬です。従来行われてきた、局所に対する痛み止めや局所麻酔薬の注射と違い、副作用の心配や患者さんの体への侵襲は極めて少なく行うことができます。
手足のしびれや脱力などの末梢神経障害で、筋膜内での神経周囲の癒着が原因と思われるものに対しては、神経の周囲に薬液を注入することで神経周囲の癒着を剥がすことも行います。リリースを行うことにより、しびれや脱力が解消されます。

治療の流れについて…

保険診療で行う注射です。
予約制ではなく、通常の診療の中で行います。診療当日の注射がほとんどです。
ごく少量ではありますが、局所麻酔薬は入りますので、局所麻酔アレルギーのある方には行うことはできません。

ハイドロリリースは、即時性はありますが、単回投与では一時的な効果となってしまうこともあります。
筋力トレーニングやストレッチなどリハビリテーションと併用することで、症状の再発を防ぐことを目指します。
当院では、国家資格を持つ理学療法士や作業療法士とマンツーマンでストレッチや筋力トレーニング、生活指導などを行うことのできる体制をとっていますので、積極的な活用をお勧めしています。

サイレント・マニピュレーション(非観血的関節授動術)について

五十肩とは…

「肩関節周囲炎」や「凍結肩」などとも呼ばれます。
肩関節は、奥の方から、関節を覆う「関節包」、「腱板」などのインナーマッスル、その周囲の「滑液包」、さらに三角筋や僧帽筋などのアウターマッスルから構成されます。
腱板や滑液包に炎症が起きてしまうことで痛みが出て、さらに関節包まで炎症が波及した結果、関節包や周囲の筋肉などが固く縮こまることで肩が動きにくくなってしまった病態をいいます。

外傷などの明らかなきっかけがないことが多いですが、石灰沈着症や腱板断裂、上腕二頭筋長頭腱炎などから二次性に生じることもあります。
多くは、肩の運動時痛で自覚し、徐々に肩の可動域制限を呈することもあります。
可動域制限の程度はまちまちですが、制限が高度な場合、衣類の着脱が痛くて困難、顔より高いところに手が届かない、など日常生活動作への支障を来たしたり、寝返りで痛む、痛い方の肩を下にして眠れない、たびたび目が覚める、など就寝に妨げが出てしまうこともあります。

サイレント・マニピュレーションについて…

近年、この五十肩の新しい治療法として「サイレント・マニピュレーション」という方法が開発されました。これは、頚部でエコーガイド下に肩周囲の神経を支配する頸椎神経根に局所麻酔を用いて麻酔を行い、縮小した関節包を徒手的に破断することで、可動域を回復させる手技です。
病歴の長い方や、拘縮で高度であり日常生活への支障が大きい方が本法の適応となります。
非常に有用な手技でありますが、あくまでも縮小した関節包を破断できるのみであり、固くなってしまった肩周囲の筋肉がすぐに柔らかくなるわけではありません。その為、可動域を改善するにはその後のリハビリ加療が非常に重要となります。

以下に、当院での治療の流れについてご説明します。

予約制の手技となります。

診察の際に、同意書を用いてご説明し、治療の日時を予約します。

手技当日

予約時間に再診いただき、血圧を測定した後に、処置室で点滴を取ります。

頚部への麻酔

点滴が終わりましたら、横向きで寝ていただき、麻酔を開始します。
エコーを用いて頸椎神経根に麻酔を行います。

麻酔が終わりましたら、腰かけていただき、麻酔が十分に効くのを待ちます。
およそ30分程度で、肩を上げたり、肘を曲げたりといった動作ができなくなります。
肩を動かして痛みがなくなったことを確認し、手技を開始します。

サイレント・マニピュレーション

拘縮した肩関節を全方向に動かして、関節法を破断していきます。
「ビリビリ」という関節法が破ける音が聞こえますが、麻酔が効いていますので大きな痛みはありません。
手技の途中で痛みが強い場合には、遠慮なくお声がけください。

全方向に可動域が改善したことを確認して手技は終了です。
最後に、エコーガイド下に、肩関節に痛み止めを注射します。

手技後のリハビリテーション

手技当日に、麻酔が効いている間に、運動器リハビリテーションを行います。
麻酔が効いていることにより筋肉も弛緩していますので、その状態で十分に関節を動かす訓練を行います。

帰宅

リハビリテーション後、血圧異常や気分不快などの無いことを確認し帰宅となります。
当日は麻酔が効いていますので、腕は動きません。
三角巾をつけてご帰宅いただきます。
およそ、徐々に麻酔が切れてきて、半日程度で腕は動くようになります。

本手技はあくまで、リハビリテーションだけでは改善しないような高度の肩関節可動域制限をを改善するためのきっかけを作ることを目的としています。
その為、手技後は定期的なリハビリテーションの継続が非常に重要となります。

診察では、手技後の予定も含め、日程をご相談させていただきます。
日常生活でお困りの方、睡眠が妨げられてつらい方は、どうぞ一言お声がけください。